にんげんマネジメント

マイノリティの闘いかた

自己紹介で気をつけるべき5つのこと

前回はこのブログを立ち上げるきっかけについて書かせていただいたので、次に書くことといえば簡単な自己紹介であろうか。

 

さて、この「自己紹介」というモノ。

進学や就職はもちろん、新プロジェクト発足や人事異動など、大勢の人に「はじめまして」の挨拶を行うときに必ずやる羽目になる。

フリートーク方式だとしっかり自己紹介がデキる人・デキない人の差が出ると考えられるためか、「趣味・特技」や「好きな食べ物」などのお題が与えられることが多いが、実はお題回答方式でもデキる人・デキない人の差は如実に出る。

みなさんは「どうせ誰もたいして聞いてない」などと思ってテキトーな自己紹介をしていないだろうか。

 

自己紹介は身近な自己表現という意味で服装や身だしなみと同じである。

初対面のときに相手がどんな服を着ていたかが、具体的な「記憶」として残らなくても、その人のオシャレさや清潔感といった「印象」として根強く残るように、最初にどんな自己紹介をしたかは、その人に対する印象や評価にかなり影響する。
ましてや口頭でなく文字で回答し、その後も残るものであればなおさらである。

 

そこで今回は、お題回答式の自己紹介で失敗しないためのポイントを説明する。

ここで説明するのは、あくまで自己表現が苦手な方にありがちな事例に基づく「失敗しないための」ポイントである。「より成功するための」ポイントはおそらく無数にあり、人によっても全く異なるので、それは表現力を高めつつ各々で研究してほしい。

 

では、まずイメージしやすいように、設定は以下のとおりする。

 

<設定>

  • あなたは社員1000人規模の企業に新卒で入社してきた
  • 新人の同期は50人
  • 入社式のあとに自己紹介カードが配布され記入を求められた
  • 記入した内容は顔写真とともに社員報として全社員に配布されるとのこと
  • 記入する項目は「職種」や「出身地」などの他に以下の①〜③
    ①趣味・特技
    ②好きな食べ物
    ③好きな有名人

 

新人50人のうち、男性A君と女性Bさんはこう回答した。

 

<A君(ぽっちゃりメガネのアキバ系)>

 ①趣味・特技…ギター
 ②好きな食べ物…ヌガーグラッセ
 ③好きな有名人…広瀬すず

 

<B子さん(スタイルがよいキレイ系)>

 ①趣味・特技…モデルウォーキング
 ②好きな食べ物…ラーメン
 ③好きな有名人…エアロスミス 

 

さっそくこれらをバッサリ斬りながら、気をつけるべきポイントを順に説明していく。

 

【その1】「あいつって○○なんだな」→誤解を受けやすいものはNG

 

 これに該当するのは、お気付きの方も多いと思うが、A君の③好きな有名人についての回答「広瀬すず」だ。

 念のためいっておくが、もちろん広瀬すずさんには何の罪もない。私も広瀬すずさんは大好きだ。広瀬さんが娘役で出演している東京ガスのCMは、世の独身男性に「あんな娘がマジで欲しいぜ…」と思わせるパワーがスゴいという点で、ヘタな行政の政策よりもはるかに少子化対策に貢献していると思っている。

 例えばこのような文を補足として載せられるのであればまだしも、あなたがその枠で伝えられる情報は「広瀬すず」という名前のみである。だれもがかわいい(カッコいい)と感じる女優(男優)をフェイバリットとして挙げることは、あなたをよく知らない人からすれば残念ながらミーハー、もしくは面食いといった印象を受けやすい。コアなファンしか知りえない広瀬さんの意外な魅力をあなたが知っていたとしても、残念ながらそこでは伝えることができないのだ。

 「好きな有名人」について、それだけで人を唸らせるような回答は通常ないので、減点対策として上記の注意点を踏まえておけば基本的に正直に書けばよい。その点でBさんの回答「エアロスミス」なんかはシブくてGOODだが、実はここにも別の落とし穴があるので後ほど説明する。

 

【その2】「それ何?」→ 大半の人がイメージできないマニアックなものはNG

 

 これに該当するのは、A君の②好きな食べ物についての回答「ヌガーグラッセ」。ヌガーグラッセと聞いてもほとんどの人はポカンとしてしまうだろう(違ったら失礼)。砂糖等を煮詰めてつくる「ヌガー」を用いたアイスケーキのようなスイーツである。

 スマホが普及し、誰もがすぐにネットで検索できる時代であることを考えると、一般的に馴染みのないワードをドンと投げかけることもアリと言えなくもないが、大勢の人に向けた表現としてはやはり不親切である。詳細はネットで検索して調べて欲しいのであれば、見た人を検索という行為まで誘導するためにも、何となくイメージくらいは浮かぶものを選ぶことが望ましい。

 インパクトを持たせたいのであれば、良い例としては「ハンマーヘッドカレー」。ハンマーヘッドカレーとは、ロックバンド“ブランキージェットシティ”でフロントマンを務めていたカリスマロッカーの浅井健一氏がプロデュースする欧風カレーのことである。詳細はわからなくても「カレー」という食べ物であることはわかるので、「ハンマーヘッドカレーってどんなカレーなの?」と興味を持ちやすく、会ったときの話のネタにもなりやすいだろう。

 

【その3】「それって嘘でしょ」→ 疑われやすいものはNG

 

 その1と同じく、正直に書くことも大事だが、嘘くさいと思われてしまう可能性が高いものは避けるべきである。あなたが自己紹介をしようとする相手は現時点であなたに関する情報をほとんど持っていない(ことが多い)、ということを忘れてはいけない。 

 これに関してはBさんの全ての回答が該当する。確かに①趣味・特技についての回答「モデルウォーキング」は嘘くさいけど、②のラーメンや③のエアロスミスは別に嘘くさくないのでは、と思われる方もいるかもしれない。

 なぜラーメンやエアロスミスがNGなのか。

 単刀直入に言うと「Bさんの好みではなく、Bさんの彼氏(または元彼)の好みである」と思われてしまう可能性が高いからである。特にラーメンについては、雑誌のライターでもない限りキレイ系女子がひとりでラーメン屋巡りをしているとは一般的に考えにくいため、彼氏主導の情報だということが見抜かれやすい。そうなると、Bさんとしては「男性と盛り上がれる最高のネタ」として挙げたつもりだったのに、Bさんにラーメンの話を振ったところで本気で盛り上がる可能性は低いし、Bさんをラーメンデートに誘うこともできない。ターゲットであったはずのラーメン好き男子をこの上なく盛り下げてしまう結果となる。

 もちろん彼氏からの影響であったにせよ、今やBさんは本当にラーメンやエアロスミスが好きなのかもしれない。しかし先ほども述べたように、ここに記すことができる情報は「ラーメン」「エアロスミス」という言葉だけであり、残念ながらBさんが本当にラーメンやエアロスミスを好きだということを裏付けることはできない。「本当だもん!本当に好きなんだもん!」という気持ちをグッとこらえ、ここではラーメンやエアロスミスを封印しておくことが賢明だ。

 どうしてもラーメンと書きたいのであれば、「出前一丁」と書くことをオススメする。上記のようなジレンマから逃れることができるだけでなく、どことなく家庭的な印象を与えることができる。別に「マルちゃん製麺」でもいいのだが、あまり近年に限定すると現在ズボラな生活をしているという印象にもつながりかねないので避けた方がよいだろう。

 

【その4】「こいつマジじゃん」→ 前のめり過ぎるアピールはNG

 

 Bさんの①趣味・特技についての回答「モデルウォーキング」はそのまんまなので特に触れる必要はないだろう。注目したいのは、A君の①趣味・特技についての回答「ギター」だ。これはスタンスによって必ずしもNGとは言い切れないのだが、ほとんどの人が前のめりアピールしようとして失敗している例なので挙げさせてもらう。

 繰り返しになるが、自己紹介は「表現」である。「趣味・特技として回答した内容」は、イコールその人の「実際の趣味・特技」なのかと思われがちだがそうではない。もちろん結果的にそうなることもあるが、正しくはその人が「趣味・特技として挙げたかった内容」だ。

 例えば、趣味・特技に「カンフー」を挙げることは、その人がどの程度の達人であるかどうかはさておき、「(普通の人にはあまり馴染みのない)カンフーというジャンルを私は知っているんですよ」というアピールとなる。意外性があるので、なぜカンフーと関わることになったか、というバックグラウンドが気になってしまう。つまり趣味・特技をひとつ答えるだけで「その人」自体に興味を向けることができるわけだ。

 しかし、弾けること自体が珍しくない(特に男性にとっては)「ギター」となると微妙なのである。その人のギタープレイが面白いか否かは実際に聴いてみないとわからないが、少なくとも「ギターが弾けます」というアピール自体は全く面白くはない。

 趣味・特技の回答として「ギター」がOKかNGかは、上記のことをふまえてA君が「ギター」という回答を大勢の人に見せることにどんな効果を期待しているか、によるだろう。「俺はギターを弾ける」ということをとにかくアピールしてギター友達を増やしたい、という目的なら効果はあると思われるのでOKといえるが、大抵の場合は「俺はギターが上手いんだ」という前のめりなアピールがしたくて趣味・特技に「ギター」と書いてしまう。しかしそのアピール自体は面白くないうえに、文字から音が聴こえてくるわけでもないため、どんなにあがいても「俺はギターが上手い」のアピールにはならない。さらに本当に表現力のある上手いギタリストは、レベルを問わずに一括りにされることを避けるために趣味・特技に「ギター」なんて書かないので、結果的に自分の実力がさほどではないことまで露呈してしまうこととなる。

 表現の未熟な自己紹介は、期待した情報が伝わらないばかりか、裏に隠された知られたくない情報が伝わることにもなり得るので気をつけよう。

 

【その5】紹介したNG項目をあえて織り交ぜる「上級技」も

 

 しつこいようだが、自己紹介は「表現」である。冒頭にも述べたように、身近な自己表現という意味で服装や身だしなみと同じといえる。あなたが服装に無頓着で毎日同じジーパンとTシャツだったとしても誰にも迷惑はかけないが、周囲からの評価という点で確実に損をするだろう。服装に過剰に時間やコストをかけすぎる必要はないが、TPOに応じていろんな要素を試し、自分をよく魅せるスタイルを模索していくのが望ましい。

 1〜4で説明したNG項目はあくまで基本の話であり、あえて織り交ぜるという上級技もある。例えばBさんの①趣味・特技についての回答「モデルウォーキング」は、アキバ系男子のA君が回答したとすればかなり面白い。もちろん多少離れワザになるので、他の項目との組み合わせ等を工夫するなどバランスを調整する必要はある。

 

 

最後まで読んでいただいたあなたに感謝する。私は常にこんなことを考えている。これが私の自己紹介だ。