にんげんマネジメント

マイノリティの闘いかた

結婚しない理由

メンズであるとはいえ、私もアラサーなので、ふとしたときに「なんで結婚しないの?」と訊かれることがある。

 

相手に悪気がないのは分かるが、実はコレ、なかなかに答えにくい質問なのだ。

 

なぜなら結婚を「しない理由」など、特にないからである。

結婚を「しない理由」が特にあるわけでなく、「する理由」がないからしていない。

ただそれだけなのだ。

 

昔、やんちゃな友人と一緒にいるときは「里中はなんで煙草吸わないの?」とよく訊かれたものだが、これも同じ。

「金がかかる」とか「体に悪い」とかではなく「吸う理由がない」からなのである。

煙草がおいしそうと思ったこともないし、カッコいいと思ったこともない。

本当にただそれだけ。

 

もしあなたが「なぜ今朝、たこ焼きを食べなかったのか?」と訊かれたらどうか。

別にたこ焼きが高くて買えなかったわけでも、たこ焼きが嫌いなわけでもなく、ただ単にたこ焼きを食べる機会がなかった、つまり食べる理由がなかった。

それだけのことであろう。

 

強烈な「しない理由」がないのであれば「する」こともできるだろう、とあなたは反論するかもしれない。

なるほど、確かに翌朝たこ焼きを食べることはできる。

1週間毎日食べることもできるし、意識すれば1か月食べ続けることもできるだろう。

 

しかし絶対に一生は続かない。

 

理由は簡単だ。「理由がない」からである。

 

 

…どうだろう。なんとなく納得してもらえただろうか。

 

ここくらいまで話すと相手は納得するか、呆れるかで、どちらにしてもこの話題を終わらせてくれる。

私はそれを狙っているだけで、実は「する理由がないから結婚しない」というのはただの嘘だ。

 

本当は、私には「絶対に結婚しない明確な理由」がある。

 

では、なぜその理由を説明しないのか。

説明したところで相手は絶対に意味がわからないからである。

「それが結婚と何の関係があるの?」が9割のリアクションであろう。

私は、変わり者扱いされること自体は特に嫌ではないが、それによって妙な誤解・迫害を受けることは避けたい。

 

人はとても概念に弱い生き物である。

例えば、私が「1+1の答えは10なんじゃないかな」とつぶやくとする。

「里中はどういう考えで2ではなく10と算出したんだろうか」と真剣に考える能動的な思考の人はほぼいないだろう。

「答えは2に決まってるから、里中は頭がおかしい」という人はかなり多いだろうが、こういう人はまだ良くて、

「里中は、答えが2だと思っている自分(や世の中)を批判しようとしているのか」というふうに捉える人が実はダントツに多い。

そういう誤解を受けると、全く意図しない形で多数の敵をつくってしまう。「どうでもいい奴にどう思われようと構わない」という人もいるかもしれないが、相手がただの友人ならともかく、仕事に関わる人物だった場合は仕事に支障が出てしまうので、どうでもいいというわけにはいかなくなる。

さらに、そんなリスクを冒してまで本音をぶちまけても、運よく相手に理解してもらえたところで実はお互いにメリットがない。

結婚して幸せに生活している人が、私の考える「結婚しない理由」の本質に共鳴してしまってすぐさま離婚、なんて展開になっても仕様がないし、私も全く期待していない。

私にとって、結婚しない本当の理由をやみくもに口にすることはまさに「ハイリスク・ノーリターン」なのである。

 

 

基本的にマイノリティとは、こんな感じに「絶対に理解してもらえない」+「ヘタに口にして誤解された場合のリスク大」+「運よく理解されてもメリットなし」というものなのだが、こういう状況は多かれ少なかれ誰にでもあると思っている。

 

あなたがそんな状況におかれたとき、以上をふまえて私から助言できることがあるとすれば、

 

①無理に理解してもらおうとしない(繰り返すが、よく考えればお互いメリットはない)

②相手に腹を立てない(自分がマイノリティであることを心得よ)

③軽い気持ちで踏み込まれそうになった時に煙に巻く方法を持っておくこと

 

以上。